陸と天と、ファンとアイドル。

4部を読み終えた時に衝動的に書いたブログを、こちらにも再掲しておきます…👀

※さっき5部ラストを読み終えて大泣きしたところです

※この記事は大学生の頃の文章で、めちゃめちゃ稚拙で青臭いので、

 そういうのが大丈夫な方のみお読みください。

 いま自分で読んで、何言ってんだこいつになってました…


陸と天と、ファンとアイドル。

七瀬陸九条天について。

ふたりが「アイドル」という外枠に何を求めていて、

その欲求が何によるものなのか、知りたいなと思っています。


目次

 1.二人の原点

 2.陸と一織

 3.天と九条鷹匡

 4.九条鷹匡から出発し、TRIGGERに育まれる「九条天」

 5.陸と天


1.二人の原点


自分の愛する相手から特別に愛されていた幼児期の経験

が双子のアイドル活動(ファンへの奉仕)の礎だと思いますが、

それは

・陸は周囲から浮きながら(特別な庇護=孤立=1人

・天は周囲と同化しながら(保護者側=多数

多数の群衆の中からたった1人のお互いを見つけ・見つけられていた過去

をさしています。


幼少期のふたりは

ファン側(多数)とアイドル側(1人)の逆転した経験

をしていたことになります。

多数の中の天が、孤立する陸にとってのアイドルだった構造は、

本来のアイドルとファンの数量比の真逆)


2.陸と一織


転倒した構図を価値観のベースに敷いた陸の野望が、

世界中のみんなを笑顔に」なのは、

陸が

全てのファンを1人1人個別の人間として見つけ出して愛する

(=了さんが望んだ方法

という莫大な労力の浪費をさします。


病気以外の理由でも陸が壊れてしまいそうで怖いです……。


(作中で了さんが出てきたことで、

 ファンがアイドルに望むことのひとつの例として

 そういう”見つけてもらう”形が提示されたってことでもあるので、

 まじで都志見さんの登場人物の出し方がすごいなと思います)


一織くんの、SNSの反応は見るなというやり方、

天にぃとは違うベクトルで過保護すぎる感じもするけど、

ありがたいなとも思います。


命がいつか尽きることを知って、

体にいつ爆発するかしれない爆弾を抱えている陸だからこそ、

暗い夜空に燃え落ちる自分が(自分の人生の意義のために)

誰かに希望を与える流星になろうとするのは、

とても健康的な発想ではあります。


でも……

その星を輝かせる夜空になろうと胸に誓った一織くんがどこまで、

より高次元に上り詰めていく七瀬さん本人の願い

・天にぃがなんで家族を捨ててまでアイドルになったか突き止めてやる(疑問・解決)

・一織だけは、オレを叱ってて(承認欲求)

・みんなとバラバラになりたくない(所属欲求)

・歌いたい(生理的欲求・自己実現欲求)

オレの歌で世界中のみんなを笑顔にしたい(自己実現欲求)

を把握して、重視して、コントロールできるのか。

その先に破滅の予感がつきまとう七瀬さんの心身を支えられるのか。


一織だってまだ17歳の少年なので、

心配です……。


3.天と九条鷹匡


そして天くんもまた、

多数(ファンの願いを叶えようとする気持ち=プロ意識が強いことは、

芸能界で多くの業界人を見てきた百さんにも言及されていました。


ゆえに見つけてしまったファン=あの頃の陸に重なる九条さんを捨てられず、

TRIGGERでいたいという所属欲求

九条さんの望みに答えたいという自分のルーツを保持する欲求

の狭間で身動きが取れずにいます。


4.九条鷹匡から出発し、TRIGGERに育まれる「九条天」


アイドルという職業は、

唯一無二の個性を持つ私をアピールしながら、

無私の精神で奉仕することが求められる職業です。


実体の自分のまま、架空のイメージの自分に近づかなくてはいけない

その矛盾の中で立ち上がる偶像に光を当てるのが、

芸能界であり、ファンであり、時代であり、事務所だといえます。


沢山の光はやがて、そこに立つ本当の自分の影をかき消してしまいます。

まっとうに正直に、本来の自分のままアイドルをやろうとして傷ついた、

2部の和泉三月さん

当てられる光の数が減っていくなかで、仲間の影が遠のいて傷ついた、

NO_MADのころの狗丸トウマさん


「伝説のアイドル」になるには、己は要らない。

自己を捨てて、ファンに、伝説に奉仕するべきだ。

そんな九条鷹匡さんの考え方は、筋が通っています。


伝説への奉仕を求める九条鷹匡さんの思想に、

最も現実味を帯びさせることのできるアイドルは、

アイドルとして他人好みに装うことさえ

己の強さにできるTRIGGERしかいません。


しかし、TRIGGER(龍と楽)は、単なるアイドルの九条天ではなく、

アイドルという天職を愛する一人の仲間の九条天を求めています。


矛盾を照らし出されることに怯えず、

沢山のライトでかき消した足元に残った小さな本来の人間の影を

仲間同士愛し合って高めあうことのできるTRIGGERは、

己を捨てよとする九条鷹匡と相容れないのです。


天の中に陸によって産み落とされた”望みを叶えてやりたい“という気持ち。

それは幼い天の頭上から降り注ぐ、

アイドルとしての萌芽をしめす光でした。


天は学校であったつらいことさえ陸の前ではおくびにも出さず、

しだいに自分の影を小さくして、陸の健康に奉仕していました。

それをプロ意識に育て上げたのが七瀬のショークラブの傾きであり、

九条鷹匡という、頽廃的な環境からの救いでした。


その救いだった九条さんが、今度は天を照らす強い光に

なってしまいました。


望まれて応えるやり方を得意とする、

応えることで自分の意義を確かめてきた天にぃは、

自分から何か望むことは少ない人です。

九条天さんは、

九条天というアイドルの虚像が一人歩きしないよう滅私に徹するという、

正しい」やり方を意識してできるアイドルです。


天に何か望む誰か(=九条)が変わらない限り、

天はいつまでも、同じ場所から生まれ出る、

他人由来の野望に囚われ続けます。


しかし、アイドル七瀬陸の出現をきっかけに、

「天に何か望む誰か」である龍と楽との絆が強固になり、

二人は今や

アイドルではない天自身の生活の一部とさえなっています。

天くん本人の自我が、いま、

龍と楽によって育まれているのです。


第4部までに、天くんは、

アイドル九条天として行き着くべき場所に、

自分のまま、七瀬陸のライバルのまま上がりたいという

願望を持ってしまいました。

そこにあるのは、鷹匡の夢を叶えてあげたいという、

他人本位の動機ではありません。

それを、仲間であるTRIGGERは歓迎しています。


5.陸と天


自分の望みが先にある陸と、誰かの望みが先にある天、

目指す未来、実現したい夢は同じ


二人の道筋が交錯する、アイドリッシュセブン第5部。

たった一人のファンだった陸多数の中のアイドルだった天

それぞれの「アイドルとしての望みは肥大し、

生い立ちに導かれるように、原点に帰るように、

陸は自分の才能ある体に、天は誰かの思惑(九条)に、

それぞれ夢への版図を描き出され、同時に阻まれ、狭められています。


怪物と呼ばれた七瀬陸。時代はTRIGGERと叫んだ九条天。

いよいよ”モンスタージェネレーション“のお膳立ては整いました。

あの日、ゼロアリーナの前でライバルとなった二人が、

その場所で再び何を語るのか。


第5部、楽しみです……。

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