mottoわたしのにいさん 

◼️チョコで酔って幼児退行した一織が、正気に戻ったものの勢いで三月さんと甘えた子供プレイをする話

あまえたさんのおそうじえっち

 誕生日なんだから、たまには甘えて。
 たしかに、言い出したのはオレだけど……。
「い、いおり。その、……大丈夫か?」
 メンバー全員での、一織の誕生日会。一織からすれば、実家の頃のように甘えた空気を出すのは難しい場のはずだ。
 さっきまで黙々とチョコレートを食べていた一織が、べったりとオレに抱きついて離れなくなるなんて、予想できなかった。
 少し前に、昔の一織はこんなに可愛かったんだと、クマのぬいぐるみを抱く一織の写真を見せてメンバーに自慢したのを思い出す。
 とろっと甘くまぶたを下げた一織は、眠たそうにオレの腕に頭をこすりつけて、んん、とむずかり声をあげた。
「いおり、だいじょうぶです」
 ……これ、もしかして……。
 すっかりカラになったチョコの容器を嗅いでみる。甘さの中に、微かに洋酒の香り。
 すっかり乱れてナギと環を椅子にする王様の姿が、視界に映る。あいつもさっき、これ食ってたっけ……。
「一織、チョコ美味しかった?」
「はい。あまくて、ちょっとにがくて、おとなのあじがしました」
「酒入りだったかー……」
「ふふ、お兄ちゃん」
「いおりぃ〜………」
 可愛い弟の可愛い甘えたな仕草に、幼い頃の呼び方。無邪気な姿を咎められるわけもなく、額を押さえた。
 オレの一織がかわいい。酔った頭が、このまま一織を抱きしめて甘やかせと体に信号を送る。きゅるんとした目つきで腕を抱き寄せて、幸せそうに頬擦りしてくる弟の体温が、思考を鈍らせていく──このまま部屋に連れ帰って寝かしつけてやりたい……。
 とはいえ、メンバーもいる前でこんな姿を見せるのは、明日覚醒した一織が引きこもってしまう危険がある。それもそれでかわいいけど。
 唇を指先で押しながら考え込んでいると、一織がオレのまねをして、同じしぐさで唇を押さえた。
「一織?」
「おくちのちゅー、するんですか?」
「うえっ? え、えーと、し、したらまずいんじゃないか……? 一織、いいの?」
「いおり、したいです」
「し、したいか〜ッ……お兄ちゃんもしたいけどぉ、明日お前、後悔しない?」
「どうしてですか? お兄ちゃん、いおりとちゅー、いやですか」
「わーっ嫌じゃない嫌じゃないよ! お兄ちゃんは一織が大好きだよ! ちょっと部屋行こうな、なっ。ごめんみんな、オレちょっと一織寝かせてくる」
 壮五に絡まれてそれどころではないナギが、ワタシのことも助けてくださいと悲鳴をあげ、大和さんは日本酒を手酌で注ぎ足しながら、怪訝そうにオレたちを見た。
「寝かすったって、イチのベッドまで運ぶのは無理だろ。そんなんで、システムベッド上がれんの」
「あー……オレの部屋連れてくよ。一織、オレと一緒なら聞き分けいいから、自分でベッドいけると思う。あとごめん、今日の一織のことは忘れてやってくれ……」
「三月ー、一織どうしたの? 具合悪い?」
 大和さんに頼まれたつまみをキッチンで錬成していた陸が、禍々しい消し炭を持ってリビングに現れる。一織、陸にこんな姿見られたって知ったら立ち直れないかもな……。さっさとひきあげないと……。
「いや、平気だよ! ちょっと疲れたのかもな。ごめんおっさん、あと頼んだ! ほら一織、たっちできるか?」
「ん……おにいちゃん、どこか行く? いおりもいっしょがいいです……」
「一緒一緒! 一緒にねんねしような。こども部屋行こうな。じゃあみんな、おやすみー!」
 抱き起こすように脇に手を差し込むと、一織は満足そうに立ち上がり、オレの服の裾を掴んでついてくる。
 陸には平気って言ったけど……。
「オレが平気じゃない……」
 たすたすとついてくる靴下の足音は、あの頃よりもずっとしっかりした足取りで。弟は、大人の体をしているのに。
 ……赤ちゃんみたいに甘えてくる一織は、クマさんを抱いて寝ていた頃と、同じ姿に見えてくる。
「お兄ちゃん」
「んー? どした、一織」
「いおり、おトイレ行ってきます」
「あっ、そっか、そうだよな。寝る前に済ませてえらいな。じゃあ、ドアの外で待ってるな」
「はい」
 一織は迷いなく、トイレのドアを開けた。当たり前だけど、実家とは違う間取りなのに、すんなりと動いてみせる。
 ……もう子供じゃないんだけどなあ……。
 あの頃みたいに一織を甘やかして、たっぷり可愛がれると思うと、勝手に顔がにやけてくる。眠くなるまで本を読んでやったり、くすぐって笑わせたり。今日はクマさんがいないから、すぐには寝付けずにぐずるかもしれない。そうしたら、たくさんキスして抱きしめてやろう。
 一織は覚えていないかもしれない、いくつもの思い出をなぞって、今夜は特別な夜が過ごせそうだ。
 妄想に微笑んでいると、水の流れる音がして、トイレのドアが開いた。
「一織。全部出せたか?」
「う……そ、そうですね。では兄さ……お兄ちゃん。ベッドに行きましょう」
「ん? うん。一織、お手手つながないのか?」
「おてっ……つなぎます。お兄ちゃん……」
 恐る恐る一織が手を繋いでくる。手を洗ったあとの冷たい指先を、手のひらに包み込むと、一織はいつもほっとしたように、オレの指先を握り込んでいたっけ。
 ……と、思うのに。
 一織は、緊張したみたいに手をガッチリと固めて、握り返してこなかった。
 心なしか足取りはすたすたとすばやく、顔つきもきっぱりして、甘えるというより、後ろめたいみたいな……。
「……一織、お兄ちゃんと一緒にねんねするよな?」
「いっ……ね、ねんね、します」
「お口のチューもする?」
「しっ、し、ます」
「一織はお兄ちゃんとチューするの好きだもんな」
「……すき、です」
「オレも大好きだよ。オレの部屋、いこっか、一織」
「はい、……兄さん」
 子供部屋じゃなく、オレの部屋、と言ってかまをかけると、一織はオレが気づいていることに気づいたらしい。子供の頃とは違う呼び方で、オレの手をきゅっと握った。
 ドアを開けて、部屋に招き入れる。一織は恥ずかしそうに頬を染めて、俯きながら、オレに続いた。
 暗いままの部屋で、月明かりを頼りに、ベッドへ歩いていく。一織はオレの一歩うしろをついてきて、気まずそうに立ち止まった。幼い頃と同じ、控えめな足取り。
「兄さん、あの、さっきのことは……」
「オレ、一織を甘やかしてやりたいなって、ずっと思ってたから、今夜は嬉しいな。ほら、足冷えちゃう前に、お兄ちゃんのベッド入りな」
「あ……。……はい……」
 ベッドに腰掛けて誘うと、一織は控えめな仕草で、ベッドに膝をつく。スリッパを脱いで、のそのそと布団を持ち上げ、オレの布団に潜り込む姿は、小さい頃と変わらない。
 ふっくらとやわらかな頬をつつくと、気まずそうに、ん、と小さな声が上がった。
「いおり。何したい? お兄ちゃんに甘えてごらん」
「ね、寝るんですよね……?」
「うん。寝る前にご本読んでやろうか。眠くなるまでおしゃべりする?」
「お兄ちゃん、その、そろそろ寝るので。いおりは自分の部屋に……」
「一緒に寝るんだろ。今夜はお兄ちゃん、一織を抱っこして寝ちゃおうかな」
「やっ……それは、その、どきどき、してしまうので」
「ドキドキしちゃうの? 一織、どうして? お兄ちゃんに教えて欲しいな」
「に、にいさん、変なスイッチ入ってませんか……?」
「さっきは一織の方がとろとろだったくせに」
「そうですが……」
「ほら、今日はクマさんの代わりに、お兄ちゃんが手繋いでてやるからな」
「う……、はい……」
 翻弄される一織がかわいくて、つい調子づいていじめると、一織は手のひらを汗だくにして、オレの手を握った。大きくなった二人じゃ狭いシングルベッドを理由にして、ぎゅっと体を寄せた。足の裏で包み込んだ一織のつま先が、くすぐったそうに、左右の足で交差する。
「あっ。一織、足冷たいじゃん。靴下履いてるのに、湯冷めしちゃったか?」
「さっき、リビングでは、カーペットにそのまま座っていたので……」
「あちゃー。お兄ちゃんがあっためてあげる。足貸して」
「えっ、ちょっと、兄さっ……」
 布団に潜り込んで、一織の足を両手で掴む。くるぶし丈の靴下を剥き取ると、びくんとつま先を震わせて、一織が小さく声を上げた。
「ひゃっ、ぁ、いいですから、そんなの……」
「だめ。今はよくても、明日の朝お腹痛くなっちゃうだろ。ぽんぽんたいたいですって泣いちゃう一織、可哀想だから、見たくねえの」
「そんな泣きかた、もうしません……自分でできますから、あんまりさわらないで……!」
「なんで? いいじゃん。ほら、ぎゅってしてあげる。お兄ちゃんの胸、あったかいだろ?」
「あったかいですけど……っ、くすぐったいです……っあっ」
 一織がかすかにつまさきを動かすと、ぴっとりと胸に抱いていた足が、オレの胸のうえで、乳首を少し掠めた。乱れた声に、バサリと布団を持ち上げて顔を見ると、一織は肩を縮めて黙り込んでいた。
 いけないことをしてしまったみたいに、目を潤ませて、口元を押さえている。
「どうしたの、一織」
「なんでもないです、すみません、……兄さん」
「何が?」
「う、そ、その、……さわってしまって……」
「どこに?」
「ど、こって……えと、それは……」
「お兄ちゃんのおっぱいのどこに触って、そんなふうに泣きそうになってんの?」
「……っ、わかってるんじゃないですか……!」
「だって、触られたのオレだし。乳首ツンツンされて。やらしい」
「やっ、やらし……っ! ツンツンなんかしてません!」
「えー? こんなふうに触ったじゃん。オレの胸」
「ひぁっ!」
 胸に手のひらを乗せて、親指でこねるように一織の胸の尖を潰す。本当は、飲み会の間も、薄いパジャマ姿の弟の胸で、かすかに尖って主張するものを、いつ触ってくれようかと狙っていた。
 襟ぐりの開いた無防備な服を着て、オレの前に姿を見せる弟。つんと持ち上がったシャツの下の、うすいピンクのそこに触れたら、弟がどんなふうに目を閉じて体を跳ねさせるか。これまで何度も触って確かめていた。
 誕生日なんだから、さすがにオレだけが独占するわけにもいかないなと思って、諦めてたけど……。
「いおり」
 一織の唇のすぐ近くに唇を近づけて、わざと吐息を頬に当てる。人差し指の脇でかしかしと弾くと、一織の胸の先がさらに尖ってくるのがわかった。
 背中を反らせて抵抗する一織を押さえ込もうと、腿の上にまたがる。オレの方が体が大きかった頃は、こうして抱きついて押さえ込めば、一織は簡単に抵抗できなくなった。
 その頃より体も大きくなったくせに、一織はいまだに、オレにのしかかられると、うまくあらがえなくなってしまう。
 両手で脇を掴んで、親指の先で引っ掻くように粒をいじめると、一織は髪を振り乱して、首を逸らした。もう腕も、暴れることができずに、オレの服をけなげに掴んでいる。
「ひっ、やっ、ぁあ、ぁ、だめっ、だめですっ」
「だめじゃないよ。なあ、お口のチュー、するんじゃないの?」
「しませんっ、もう子どもじゃないんです、おやすみのキスなんて……っ、はぁんっ」
「一織がキスしてくれるまで、ここ触っててもいい?」
「やっ、やです、っやだ、にいさ、っおにいちゃん……!」
「触られるだけじゃいや?」
「ぇっ? ……ぇっ、え、にいさ、っ?」
 ずり、と体をずらして、一織の裾から手を差し込む。手の甲でゆっくりと服を持ち上げると、生肌にぶつかる外気が寒いのか、一織がかすかに片目を閉じた。
「ここ、舐めて欲しい?」
「舐っ……」
「一織が、お口のチュー、してくれないから。お兄ちゃん、寂しくなっちゃったな」
 一織の首元まで、シャツの裾をずり上げて、力無い一織の両手首を、一緒くたに片手でつかんだ。
「一織のここも寂しそう」
 腕を上げる形でいましめられ、一織が不安そうにオレを見上げる。下がった眉の下、瞳は潤んで、けれどかすかに、何かを待って輝いている。
 身をかがめて、そこに、吐息を吐きつけた。
「んっ……!」
「お兄ちゃんがあっためてあげる」
 さっきと同じ言葉で、一織の胸に熱気を浴びせる。とまどったらしい一織の足が、耐えかねて、シーツをかいた。
 ふっ、と唇を窄めて息を当ててやると、一織がまた体をよじる。ちゅうと胸の横に吸い付いて、脇の下まで舐め上げた。
「やぁあっ!」
 じっくりと、一織の胸の脇を、唇でくすぐる。たまにちろりと舐めるたび、一織が耐えかねたように声を上げた。
 オレの与えるものぜんぶに、びんかんに反応を返す、可愛い弟。オレに近づきたかったなんて、大きな目をキラキラ潤ませて告げる、可愛い──。
「あのっ、は、恥ずかしいので、そろそろ……」
 一織が、くやしそうに眉を寄せて、じっとオレを見下ろした。体を起こすと、オレの動きを追いかけて、一織の目がきらりとひかる。
「ダメ?」
「っだ、め、です……、お兄ちゃん」
 オレの下で、オレに両手首をつかまれた、オレの可愛い弟は。
 熱っぽい目つきで、細く吐息した。
「……いおりにも、させてください」

★続きは冊子でお楽しみください。

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