HOPEFUL
◼️ちんちんの中、よしよしして
どうしてこんなことになったんだろう。
寝そべって天井を仰ぎ見るしかできない天に、陸が甘えるように体を重ねる。ぴったりと重なり合えば、産まれる前に戻ったようだ。
違うのは、お互いの口腔をお互いの舌で埋めあって、指はしっかりと組み合わされて、産まれる前より近くに居ること。
そして、ゼロ距離で天をうっとりと見つめる陸の瞳に、情欲の色が宿っていること。
「ん……天にぃ……」
名前を呼ばれる。陸の鼻から甘い吐息が抜け、天は体を固くした。天の緊張に気づいてか、あるいは何も悟っていないのか、陸は天の下唇を唇で啄んで、ふたたび熱い舌を押し付ける。
偶然だった。
偶然、それぞれの出演するドラマのロケがそれぞれに長引き、偶然、その撮影地が近く、偶然、互いのマネージャーの急遽押さえたホテルが同じで、偶然、ロビーで鉢合わせた。
会いたかった、と全身で主張しながら駆け寄ってくる弟を諌めながらも、天は内心、妙に納得していた。
かつて記憶の中に押し込めた弟が、自分の世界に再び姿を見せたとき、天はこれが運命というものかと愕然とした。なにか陸とのあいだに偶然の縁が結ばれるたび、そんな偶然さえ引き寄せてしまうほどの運命的な力が、二人の間に働いてでもいるのかと。
天はそれを受け入れている。
ただ一つ、どうしても納得の行かないことを除いて。
「ねえ、本当にするの。明日の入りが遅くなったとはいえ、陸だって明日も撮影でしょう」
散々唇に吸い付いてなお離れようとしない陸から、顔を背けて無理やり逃れ、天はきびしい口調で問い質す。お互いベッドに向き合って、同じ備え付けの白いルームウェアで座り込む。
「する……したい。あのね、オレ今日、すごいもの持ってきちゃったんだ」
陸は天に叱られることに慣れたのか、それともなにかもっと気になることがあるのか、天の怒り口調がこたえなかったらしい、嬉しげに荷物をさぐりだす。
「天にぃの撮影場所も多分近いって、一織が言ってたから……もしかしたら、って思って……もちろん、ほんとにこうなるなんて思わなかったんだけど」
「あんまり中身をぽいぽい出さない。なくすでしょ」
「はーい……あ、あった!」
目当てのものを見つけたらしい陸が、黒い箱を手もとに残し、カバンをベッドの下に置いた。
陸の手の中で開かれたそれを覗き込むと、銀色の、緩やかなウェーブを描く棒状のものが、4本。様々な太さで収まっていた。
これは……。自分の体を、陸のものを受け入れられる形にするためにさまざまなものを試していた時、インターネットで見かけたことがある。
まさか。
「あのね。これ、ちんちんの穴に入れると、気持ちいいんだって」
ないしょの話をするように、陸が天の耳に口を近づけて囁く。
「天にぃに、ちんちんの中、よしよししてほしい……」
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