キスおねだり可愛い選手権 2 【陸編】


「陸くん。お疲れさま、5人目だよ」
「壮五さん。お疲れさまです!」
「ちょっといいかい?」
「え?はい」
『なんだ?壮五が陸の唇に、指でなにか塗りつけて……リップバーム?』
「さっき、唇拭いてくれたんだよね。荒れちゃわないように」
「あ、ありがとうございます」
「僕にも塗ってくれる?」
「あ、はい!」
『なんかあれだな。ママと娘』
『わかる。五歳かな?うさぎさん組かな?って感じ』
『そーちゃん、おねだりとか普段ぜんぜんしねーもんな』
「ふふ」
「あっ、壮五さん、ちょっと!笑われると塗れないです」
「ごめんごめん。くすぐったくて。陸くん、すごい優しく塗ろうとするんだもん。もっと力を込めてもいいよ?」
「でもなんか、壊しちゃいそうで」
「そんなに簡単に壊れないよ。遠いから、塗りにくい?」
『今、返事を聞く前に接近しましたね』
『リク、ソファの端に追い詰められてちょっと仰け反ってるな。ソウ結構グイグイ来るとこあるから』
「ちょっと近すぎます!」
「そう?このくらいの方が塗りやすいんじゃないかな」
「壮五さん、顔綺麗だから、照れるっていうか」
「……陸くんは、すごく可愛いよね。歌っている時は凛々しかったり、儚げだったりするのに」
『壮五……ソファの背もたれと肘置きに両手ついて……もうソファの隅に陸囲われちゃってんじゃん』
『なんかりっくんの目、ぐるぐるして見える』
『汗もかいていますね。相当焦っているようです』
「どうしてこんなに魅力的なんだろう。陸くんは」
『あっ、顎クイだーー!顎クイの上に小首を傾げて覗き込む!壮五がラスボスか!』
「君の魅力をもっと知りたい。まだ誰も見たことのない陸くんを、僕にだけ見せてくれない?」
「や、あ、あの、ど、どうすれば」
「暴れないで。ちゃんと離してあげる。そうだな、君から僕に、キスをしてくれたら」
「そっ……」
『壮五、大学でそーとーモテたんだろうな』
『身なりも中身も一級品ですからね。女性達は放っておかないでしょう』
『そーか?ポンコツじゃね?』
『たぶんそれはあなたにだけですよ』
「手を貸して。僕の頬に手を添えてごらん」
「こう、ですか」
「そう。上手だね」
『もうほぼゼロ距離でこんな美人に微笑まれたら、お兄さんだったらキスしちゃうわ』
『オレ失神するかも。一緒に暮らしてると家庭的で忘れちまうけど、壮五ってなんか、脱がなくてもエロいよな』
「そうしたら、次はどうしたらいいと思う?」
「えっと、目を閉じて、キス?」
「そう。顔を近づけながら、唇が触れそうになったら目を閉じるといいよ。できそう?」
「わかりました」
『誘導ズルいわ。もうソウが家庭教師のお姉さんに見えるもんな』
『それは大和さんの性癖じゃねえの?』
「目を閉じておくから、陸くんのタイミングで、キスをしてくれるかな」
「は、はい……」
『25秒を残してここに到達する安定感、さすがですね。急いた印象もなく、余裕のあるゴールが見られそうです』
『なんか新しいトビラ開きそうだから早く終わって欲しいんだけど……』
『耐えろ、大和さん。オレもだから』
『そーちゃん俺に勉強教えてくれる時はあんな感じじゃねーんだけど。もっと頭抱えてる』
『容易に想像できますね』
『……と、そうこう言ってるうちに陸が行った!』
『顔を近づけながら目を閉じました』
『そして!……鼻に着弾!』
「んふっ」
『なんでだよwwwソウ笑っちゃってんじゃん』
「陸くんそういうところ可愛いなあ、無理しないでいいよ」
「いや!やります!壮五さん、目閉じてください」
「じゃあ、お願いします」
『あれだな。リクはちょっと引かれた方が追いかけたくなるタイプ』
『あー。これ後半の方が有利じゃね?他のやつの傾向見てキス誘えるし』
『なんとなく雰囲気も出来上がってきますからね。七瀬さんは流されやすい方なので、上手く流れを作ってしまえば乗ってくるようです』
『って、言いつつ次のナギは向こう向いてっけどな』
『お、今度は行けそうじゃね?』
『残り5秒です』
『3、2……』
チュッ
『成功〜〜〜!ブザービーター!壮五すげ〜!』
「恐縮です。陸くん、ありがとう。このリップはあげるね」
「えっ」
「陸くん、咳や鼻水で口元が荒れやすいって言っていたから。自然由来の成分で出来ているクリームなんだけど、唇以外にも塗れるものなんだ。よかったら使って。僕が今開けたもので悪いけど」
「そんな!ありがとうございます。嬉しいです」
『競技後も紳士とかイケメンかよ〜。リク、一旦お色直しするみたいだから、スタッフさん着いてって』
「あ、はーい!お色直し?」
「ああ、次はナギくんだから。がんばってね」
「あ、あー!なるほど!そっかあ、うわー、がんばります……」

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