キスおねだり可愛い選手権 3【大和編】
「こんばんは」
「うわっ何!停電?」
「こういうことをするのに、慣れていないので……部屋の照明を暗めにさせていただきました」
「それカメラさん的にOKなのかよ」
「必要ならあとで図で示します」
「お兄さんまで画伯ワールドに巻き込むのやめてくれる?」
『カンペによると消灯OKのようですね。逢坂さんが二階堂さんのところに辿り着けなさそうですが』
『ハプバーのサービスタイムってどういう意味?』
『陸、カンペは読み上げなくていいからなー』
「うわっ!」
「大和さん。捕まえた。ふふ、驚きました?」
「後ろから回り込んでくるとは思わなかったな。つか、耳元で喋んな……」
「隣、いいですか?」
「……おー」
『何してんのかあんま見えないな。さっき大和さんソファに座ってたっぽいけど』
『会話の内容から察するに、逢坂さんが背もたれ越しに抱きついたのでは』
「ソウ、ちょっと近いかな、もーちょい離れようか」
「大和さんの近くに居たいんです。それに、暗いと唇の位置が分からないでしょう?」
「……チッ」
「舌を鳴らして、誘っているんですか?」
『……この組み合わせ、なんかアダルトな空気出ちまうんだよな。無言の時間が生々しいっつーか……てことで一織と環は目瞑れよー』
『えー。王様プリン1個な』
『わかったわかった。……あ、助かる。ムードある間接照明点いた』
『みっきーもっとわかりやすく!目つむってる俺らも分かるように!』
『2人がソファで肩くっつけて座ってる!』
『ソウゴがヤマトの唇を指でなぞっています』
『は?エッロ』
『十さんとかがライブでよくやるやつだ!』
『あー、たしかに壮五はTRIGGERファンだし、参考にしてるとこあるかもな』
「ああ、大和さん、ソファだから嫌なんですね。たしかに少し窮屈ですよね」
「いや、ソウが離れてくれれば……」
「ベッドのほうが寛げそうですね。大和さん、行きましょう」
『壮五さん……すごい……手まで握っちゃった』
『有無を言わせないですね。二階堂さんもつられて立ち上がった』
『あ、一織目閉じてないじゃん!もーオレが塞ぐ!』
『痛っ!それは鼻です!七瀬さん暴れないで!』
『一織も陸も落ち着け!2人がベッドの脇に立ったぞ』
『ソウゴがヤマトだけ座らせました。ヤマトの肩に手をついて……片膝をベッドに乗せて……これは……薄くて高い本でよく見るポーズです』
『ナギのたまに言うそれ何なんだ?』
『オタクの祈りですよ』
「……暑いですね。空調がおかしいのかな……」
『見せつけるようにシャツのボタンを開けるソウゴ、エロいです』
『暗闇で軋むベッド、やばいな。壮五ふだん肌出さねえから、あんな前髪かきあげながらの流し目なんか食らったら女の子どうにかなっちゃうだろ』
「大和さんも、暑いでしょう?シャツの前、開けますね」
「俺はいいから」
「でもほら、髪が汗で、額に張り付いています。熱でもあるのかな」
『おでこ!うわ、おでこ合わせて熱計ってる』
『兄さんも私にやるじゃないですか』
『兄弟とは意味が違うだろ。今回意外ともう時間ないけど、壮五大丈夫か?』
「……ふふ、僕の方が熱い」
「そこで笑うなよ、息がかかるだろ」
「じゃあ、離しましょうか。それとも、息がかからないほど近づけばいいですか?」
『うわー!ちょっとマジ一織と環は目閉じとけ!』
『ソウゴ、ヤマトの肩を押してベッドに倒してしまいましたね。このまま覆いかぶさります、ワタシは知っていますよ』
『いおりんちゃんと目閉じてる?』
「こんなに暑いのは、たぶんあなたのせいなんです。だからあなたがどうにかして」
『ほ、ほんとに壮五さんのしかかっちゃった……ナギすごいね、壮五さんもすごい……』
『ジャパニーズトコドンですね』
『ナギそれ床ドンのことか?』
『ジャパニーズトコドン、和太鼓みたいですね』
『きょくをえらぶどん?』
『のるまくりあたっせいだどん!』
『兄さん、メンバーの絡みが直視できないからって司会を放棄していませんか?』
『あー三月!どうしよう、もうあと5秒だ!』
「キス、してくれませんか」
『4、3……大和さん動かないよ〜!』
『two、one!』
『せーせきはっぴょ〜〜〜!タイムアップです!壮五惜しかったな!お疲れさん!』
「色々小細工してみたんですが、ダメでした」
「ソウ、電気消した時空調もいじったろ。ほんと暑いわ、何度?」
「30度くらいに……」
「真冬でもやんないでしょ!ソウはもうちょっと振れ幅調整しなさい」
『大和さんまじで汗かいてんじゃん。でも今から着替えられるし、ちょうど良かったな!』
「……あーマジか、ナギか。……お兄さん帰っていい?」
『センターは女装したのにリーダーはできないなんて、最年長はそんなダサいこと言わねえよな?控え室行ってこい!』
「素面で女装きっついわ。酒飲んで収録できりゃいいのにな」
「そうですね。アルコールの力を借りればもう少し健闘できたかと……」
『いけんじゃね?ほかの番組、麻薬やってたし』
『あれは日本じゃありませんし、アイドルでもないですから。小鳥遊事務所を潰したいんですか』
「あ、そうだ、冒頭のあまり映らなかった箇所は、後できちんと図にしますね」
「まじでそれいらねーから!」
「というわけで壮五残念だったな、こっちも変な汗かいちまったよ」
「そーちゃんがエロいから見して貰えなかった!」
「あとで寮で観ようね」
「この配信一緒に観るのキツくねーの?MEZZO”すごいな」
「環くんとはお互いを口説くような企画もよくさせていただくので、反省の為にも一緒に見ていますよ」
「俺はゲームしてる」
「想像つくわー。と、そうそう。視聴者の皆さんに念のため説明します!前回ご覧くださった方はご承知の通り、男に絶対キスできねー派のナギのダダこねにお応えして、オレらはナギの回から女装で参加することになってます!」
「てことは、オレと一織の時も大和さん女装なんだ」
「クオリティいかんによってはキスのねだり方に影響しそうですね」
「でも今日はナギも着替えに行ってんだよな。なんか特殊な衣装だったり?」
「ペアルックとか?」
「先にナギのコンセプトだけお伝えします。えっと?ナギは……王子です!見た目まんまじゃん!」
「ナギっち、かぼちゃパンツ履くの」
「ナギくんの顔立ちだと、もっと高貴なイメージの王子かも」
「どっちで来ても似合いそうだからナギは怖いよな。ナギもだけど、八乙女とか、千さんとか、イケメンってなに着ても着こなすじゃん」
「わかる!ナギ、環の王様プリンTシャツ着てゲームしててもかっこいいんだもん」
「ふと横見たらイケメンいるからビビるよな。イケメンがなめこのみそ汁食ってる……とか、飯食いながら唖然とする時あるわ」
「そろそろ二階堂さん達の用意ができたみたいですよ。今日のあの部屋にどんな衣装を合わせてくるか、楽しみですね」
「じゃあ早速、別室の様子を見てみようか」