キスおねだり可愛い選手権 3【大和編】 


「大和さん、着替えたんですか!Tシャツになってる!」
「さっきちょっとな。リク、スーツ似合うじゃん」
「ありがとうございます!」
『ほのぼのしてるな!ファンシーな空間にスーツとTシャツって、世界観わけわかんねえけど』
『陸くん、座らないのかな?大和さんはソファにいるし、近づかないとキスできないんじゃ……』
「えーっと、大和さん、あの」
「うん?」
「ネクタイ、やってくれません、か」
『言わされてる感満載。一織だろ』
『七瀬さんがあまりに酷い計画を得意げに披露するので、多少アドバイスを』
『酷いって。壁ドンで顎クイ?』
『いえ。ステージからファンサービスをして、指バーンする!ドキドキしない?とか言っていましたね。あの部屋のどこにステージがあるんですか?』
『陸くんの考えるドキドキはライブなんだね。分かるなあ』
「じゃ、こっち来て、床座って、後ろ向いて」
「はい!」
「結び方覚えといた方がいいぞ、これからも着るだろうし」
「うん……スーツってちょっとドキドキする」
「お兄さんはスーツ着ると、気が滅入るよ。改まった場でしか着ないし」
「そうなの?大和さんのスーツ、ドラマとかで良く見るけど、全部かっこいいよ!」
「あー、あれはまた別っていうか。黙って手見てろな」
『ヤマト、ストレートな褒め言葉に弱いです』
『どぎまぎしているね。陸くんがうまく流れを作れれば、すぐにでもキスできそう』
「太い方上にして、交差させんの。細い方の裏通すみたいに2回まきつけて、首元から下ろす感じで、2回目にできた輪っかに通してみ。ほい、完成」
「すごい、綺麗!」
「苦しくないか?」
「うん。平気。ありがとう、大和さん」
『ちなみに、一織くんはこのあとどう指示したの?』
『ネクタイを結んでもらうために密着しますから、手でも掴んで甘い言葉を囁いたらどうですか、と』
『甘い言葉って、陸いいのあんのか?目泳ぎ始めたぞ』
『りっくんがんばれー』
「えっと、キスします?」
「ふっ、照れすぎ。可愛いけど、ちょっと流れが強引すぎね?」
「だって他に浮かばないんだもん!」
『振り向いた陸くん、真っ赤だね。大和さんの手を掴んで離さないのは、一織くんの言ってたこと気にしてるのかな』
『応用力がないですよね。ひたむきとも言えますが』
「そこはほら。トップバッターの利点を活かすもんでしょ。俺がどんな誘い方したか思い出してみ」
「……大人のキス?」
「正解。その路線で攻めればいいんじゃねえの?」
「でもオレ……あっ、大和さん耳貸して。恥ずかしいからこっそり話すね」
『二階堂さんが七瀬さんの襟のマイクをまじまじと見ていますね』
「内緒だよ。オレ、大人のキス、できないと思う」
『りっくん聞こえてんぞー』
「……お兄さん年上が好きな方だと思ってたんだけどな。ちょっと、リク反則」
『分かるぜ……あんな囁き方されたら顔覆っちまうよな』
「えっ、オレ退場?」
「違うよ。かわいーってこと」
『片手で顔を覆いながらも七瀬さんに囁きを……』
『大和さんの不敵な笑顔、悔しいけどかっけえよな』
『日本男児は誠実が美徳ですね。ヤマト、ワタシとの約束を守っています』
『また裏取引かよ』
『誤解です!紳士的に、ヤマトの本気を見せてとおねだりしただけです!ワタシ可愛いです!』
「もー!今はオレがキスねだる番ですよ!大和さんかっこいいのやめて!」
『いおりん何胸押さえてんの?痛えの?』
『ほっといてください……』
「じゃ、可愛くおねだりしてくれる?」
「や、大和さんのキス、ください?」
『いちいちコテンコテン首かしげるの何なんですか。お人形さんですか』
『環、一織のこれ放っといていいやつだから大丈夫。心配ありがとな』
『あ、大和さんも陸くんに合わせて首をかしげましたね』
「どこに?」
「口に!」
「口って?唇?」
「うん……」
「だけでいいの?」
「えっ、他にどこするの」
「唇の中の、リクの気持ちいいところ、触ってあげられるよ。前教えただろ?」
『ヤマさんすげー舌出る!俺も出せっかな。ほーひゃん、れれう?』
『出てるよ。はしたないからしまおうね』
「あの、大和さん、オレ、唇だけがいいな」
「なんで?」
「だって……知っちゃったら、後戻り出来なくなっちゃいそうなんだもん」
『一織すごい顔してっけど大丈夫か?陸は今日も全開だよな』
『陸くんの、口元を隠しながら上目遣い攻撃、僕も弱いよ』
『別に大丈夫です!どういう慰めなんですか』
「じゃ、手離して、目閉じて」
「はい……んっ」
「いい子だ」
チュッ
『終了〜〜〜!ようやくまともなおねだり見た気がするわ!陸は正統派で好きだぜ』
「ありがとう!大和さんの唇ほんとに柔らかかった!」
『だろ?』
『なんで環が得意げなんだよw陸、一織と交代な!』
「はーい!そういえば、もう大和さんとキスすることないんだよね」
「何、もっとしたい?」
「もー!大和さん分かっててからかう!」
『ヤマト、ようやくからかえる相手が来て嬉しいんですね』
『可愛げのねえ年下ばっかで悪かったな大和さん』
「ほんとな。一番可愛がりにくいのがこれから来るし、楽しみにしてますよ」
『お手柔らかに。この機会に可愛がらせて差し上げますよ』


「一織、トリ頼むぜ」
「はい。ただ相手が二階堂さんなのが少し」
「緊張する?一織くんにしては珍しいね」
「いえ、普段寮でだらけている姿にあまり魅力を感じたことがないので、キスをねだる気になれないだけです」
「めちゃくちゃ言うじゃん、帰ったらドラマ観ようぜ、大和さんちゃんとかっけーから」
「演技は認めていますよ。ひとまず行ってきます。七瀬さん、上着を預かっておいて貰えますか」
「上着?いいけど」
「じゃあ本日ラストは一織のキスおねだり!行ってこい!」

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