キスおねだり可愛い選手権 4【壮五編】
「そーちゃん、髪の毛いじっていい?」
「いいけど、君うまくできるのかい?」
「もち。毎朝自分のやってっしー、割と得意」
「ワックスも持ってきたのか。じゃあ、鏡の前に座ろう」
『環、得意げだな。壮五も育児モード入ってないか?』
『キスをねだる雰囲気ではありませんね。逢坂さんを座らせて、後ろから腕を回す形では、ねだってもキスしづらいでしょう』
「イヤリングは外した方がいいかな」
「おー。とってやる。こっちむいて」
『タマ、顔ちっかいな。MEZZO”くんたち距離感バグっててお兄さんたまに心配』
『環もかっこいいから、すごく絵になるよね』
「な、何?」
「……そーちゃん、きれいだな」
「えっ」
チュッ
「あやべ。今のなしな!」
『えっ?えっ、環?いま壮五さんに……』
『四葉さんからキスしましたね』
『美しい女性が自分の手の中でしおらしくしていたら、口付けてしまうものです』
『自分からキスをすれば、相手からのキスも誘いやすいかもしれません。あまりフェアではありませんが、上手いと思います』
『MEZZO”ファンの女の子たち、いまスマホ落として割ってないか?』
「そーちゃんはデコ出さねー方がすき」
「……わ」
「前髪下ろして、片っぽ耳かけといて」
「う、うん」
「できた。かわいー」
『四葉さん、満面の笑みですね』
『環のああいう笑顔、いいよね!ほんとにそう思って言ってくれてるんだ!って元気出る!』
『ソウゴ、前髪を流す髪型も似合いますね』
「そーちゃんの頭から俺の匂いすんの、なんかドキッとすんな」
『さすが抱かれたい男ランカー、呟きがエロいぜ』
『タマのあれは天性だよな』
「つけてやるから、じっとしてて」
「あ、イヤリング……うん」
「このイヤリング、マジの紫陽花なんだって。なんか恋のかけらっぽい」
「ライブでもつけようか」
「そーちゃんつけたら俺もつけなきゃじゃん。ヤダ。落として壊しそー」
『すごい雰囲気いいな』
『なんかコメント忘れて見入っちゃう!』
『イヤリング=キスという先程の図式に照らせば、キスをねだるのはここしかないですね』
「えっと、そーちゃん……」
「うん」
「……やっぱ無理!」
「僕にキスをねだるのが?」
「言うなよ!」
「さっき君からしたじゃないか」
「ミスった!」
「僕とのキスが失敗だって言うのか!」
「失敗じゃん!ふつう相方とキスなんかしねーよ!」
『まあ確かにな』
『しませんね』
『しないねぇ』
「するかもしれないだろ!」
『売り言葉に買い言葉じゃないですか……逢坂さん、最近四葉さんに似てきてませんか?』
「ならそーちゃんもやってみろよ!」
「……言えたじゃないか。えらいよ、環くん」
チュッ
『え〜〜〜!うわーーーー!壮五!怖え〜〜〜!』
「あ、終了ですか?」
『切り替えよすぎ。タマ泣くなー、テレビ用の顔して、テレビ用の顔』
「ヤダし泣いてねーし!」
『あーあー、いや実際うまかったよ。全部壮五の手のひらの上だっただけで』
「だからやなんじゃん!」
『でも、初めに四葉さんからキスをしたのは上手い手だったと思いますよ』
「マジ?やらかしたと思った。そーちゃんにキスとかありえねーし」
「もしかして本気で失敗だったの?環くん、そういう誘い方するんだ、ってちょっとときめいたのに」
「やっちった。ルール違反?」
『や、ナギも手にキスするし、自分からキスがダメってルールはなかったと思う。おつかれさん!普段のMEZZO”見てる気分でドキドキしたぜ』
「普段の俺らはキスしねーから」
『環ー!唇の感触どうだった?』
「冷たかった!」
『そっちかー。タマ、戻ってこい』
「環ちょっと唇きらきらしてる!」
「そーちゃんのやつうつったかも。いい匂いするし」
「手の甲で拭いたら荒れますよ」
「オレ、この前壮五さんにもらったリップバーム持ってるよ!塗ってあげる!」
「じゃあ次は大和さんな!」
「俺ら全員成功してっし、これでヤマさんしくったらウケる」
「言うじゃないの。ここからは大人の時間だぜ。酒、解禁なんだよな?」
「向こうの部屋の冷蔵庫に準備してあるってさ。ったく、嬉しそうだな」
「兄さんも嬉しそうですけど。ほどほどにしてくださいね、逢坂さんにあまり飲ませないように」
「分かってるって。お兄さんに任せなさい。じゃ行ってくるわ」
「ヤマト、本当に嬉しそうですね。足に羽が生えたようです」
「大和さんの森の妖精の踊り……」
「リク!余計なこと言わなくていいから!」