キスおねだり可愛い選手権 5【TRIGGER編】
「てんてん。俺、マジだから」
「……マジ、の内訳を教えてくれる?」
「兄貴として、てんてんに勝つ、が、ひゃくパーセント」
「……四葉環、こうして並ぶと大きいね。それで勝ちでいいじゃない」
「ちげーし!たぶん、てんてん、抱っこできんよ。りっくんもたまに持ち上げる。やる?」
「いや、今は……わっ!」
「もーやっちった。だめだった?」
「……まあいいよ。いつも左右の大きいのを見上げているから、見下ろすのはおもしろい」
『気持ち、わかるぜ九条。やたら首疲れるよな。全員ちぢめって思うよな。それかあと20センチ伸びたい』
『六弥より大きくなる気か?すげえな』
『ミツキはそのままでいてください』
『環、九条さん持ち上げたままくるくるしてる!楽しそう!』
「これやると、りっくんちょー喜ぶ。けど重いからたまにしかやんねーの」
『ああ、環くん、九条さんにそんな……現代の天使を持ちながら重いだなんて話よくできるな、羽のような軽さしかないだろう』
『逢坂さん、九条さんの公式プロフィールは七瀬さんと同体型ですよ』
「へえ。キミ、ボクにキスをねだろうって言うのに、ほかの誰かの話ばかり。余裕だね」
『あれ?オレ、なんか、天使が環の腕で一休みしてるみたいに見えてきた……』
『確かに、抱き上げられてても舞い降りてくる途中みたいな優美さだよな。こっちのお兄さんたちは誇らしげに微笑んじまってるし』
『当然だ。普段のあいつは冷血ハリネズミだが、こういう時は決める』
『同年代の子と話していると、天も18歳なんだなって感じがして嬉しいな。今度俺も抱っこしてあげよう』
『やばい、どんどんキス見守る空気じゃなくなってきてる。九条、流れ戻してくれよー!』
「もう十分楽しんだよ。下ろしてくれる?」
「俺、兄ちゃんだから。でもてんてんより年下だから、年上にアピールするなら、強引?なワンコ?がいいって、雑誌の人、言ってた」
『そういえば環くん、MEZZO”の撮影でカメラマンさんに、随分熱心に自分のアピールポイントを聞いていたな。このためだったのか』
「わかってるんじゃない。ボクの方が君より年上で先輩。ほら、下ろして……」
「がっくんとかリュウ兄貴とじゃできねえこと、できるよ」
「……そう。でもそれは今じゃない。そういうことは、やるべきことをやり遂げてから言って」
「……わかった」
『環くんは素直でえらいね。素直な壮五くんと一緒にいるからかな』
『いえ、僕はいつも環くんに助けられてばかりで……彼の方が大人みたいな時もあるくらいです』
『あー!もー!空気がどんどん授業参観で耐えらんねえよ!キスおねだりしろ!環!』
『あはは!環ー!おねだり、しろー!』
『YES!タマキのおねだり、見せてくださーい!』
「てんてん。ちゅーして」
『来たー!肩に手置いて覗き込んでオネダリ!これは女の子ときめいちまうよな〜!のに、九条真顔のまんま!』
『全く動じませんね……』
『タマ、どう出る?』
「ちゅー、してください!」
『ああ、天の方が年上だから敬語で……礼儀正しいね』
『天のやつ、鏡でも見てんのかってくらい表情変わんねえな』
『九条さん、笑いこらえてるのかな?ちょっと楽しそうな気がする!』
『九条さんが動じない以上、四葉さんのターンが続きますね。ラリーすら始まらない勝負は初めてじゃないでしょうか』
「んーと、キスしよ?」
「……キミ、そういうことを言ってくる男と、キミの妹がキスしたら、どう思う?」
「ぜっ、てえ、ヤダ!」
「そうでしょう。今のキミは、無責任にオネダリしてご褒美を貰う犬と同じ。甘いお菓子が欲しいなら、相手の本当に欲しいものをあげなくちゃ」
『なるほど。たしかに、キスしてして!って言われてキスしちまう一織は心配になるぜ』
『私はそんなことしませんよ、二階堂さんじゃないんですから』
『え、何その飛び火』
『逢坂も簡単にキスしてたよな。一人っ子はねだられるのに弱いのか?』
『あー確かに、兄ちゃんは叱り慣れてるとこあるからな。えらかったら褒めてやりたいけど、欲しがられるばっかじゃ分けてやりたくなくなる……』
『だよね!兄さんって、わがままっていうか、全然譲ってくれない時ある!昔はもっと優しかったのに……』
『それはリクが強引なんだろ。ほら、タマがなんか言いたそうだぞー』
「……俺に!キスしたら……プリン……あげます……」
『あ、天、吹き出した』
『あいつ、笑っちまってんじゃねえか。それもかなり』
『もうそろそろ時間でこの空気では、もうキスは難しいかもしれませんね』
「あはは、ふふ……キミ、それでボクが懐柔できると思っているんだ。かわいいね。でもそれじゃダメ」
『お、九条が顎クイした』
『環くん、すごいな……よく正気を……』
『あー、ソウがあれやられたら失神するかもな……』
「愛想と愛情の違いが分かってから、出直しておいで」
『終了〜!タイムアップ!環、惜しかったなー』
「楽と龍ではできないこと、なら、ボクができることだ。TRIGGERの強さを知ったよ。ありがとう、四葉環」
「ちくしょー!王様プリン〜!」
『王様プリン?大和さん、あんたまたなんかやったろ!』
『キス出来たらプリン5個、って約束してたんだよな』
『壮五に怒られるぞ。環、どうだった?』
「てんてんちょー強え!ぜってーキスさせてやる!って思ってたのに!」
『鼻息荒さが透けて見えて、スマートな九条さん好みではなかったのかもしれない。環くん、帰ったら反省会をしよう』
「またPPAP?古くね?てかそーちゃん俺ん時だけ正気もどんなよ」
『PDCAだね。君が未成年のうちは、僕は君の保護者のようなものだから』
「かーちゃんは息子のキスまで反省会しねえよ。べつにそーちゃんかーちゃんじゃねーし。相方じゃん」
『はいはいMEZZO”くんそこまでな。この調子ならソウも次行けるな』
『え?次ですか?』
『次だろ。三試合目は、ソウが八乙女にキスねだられる試合だって』
『えっ』
『壮五が正気に戻ってるうちにサクサク進めような!八乙女、壮五、行ってこい!』
『おう。逢坂、忘れられない夜にしてやる』
「ラブゲじゃん。がっくん、やるー」
『別にいま、外、夜じゃないけどな!あー肩組まれた壮五がもうヤバい!……果たして八乙女は壮五のキスを獲得できるのか?別室へどうぞ!環と九条は戻ってこいなー』
「お疲れ様でした。ほら、四葉環、いじけてないで戻るよ」
「いじけてねーし!ぜってー次は俺が勝つ!」
「ふふ、頼もしいね。期待してるよ、お兄ちゃん」