キスおねだり可愛い選手権 5【TRIGGER編】
「遠いな!もっとこっち来いよ」
『なんだ。楽も出鼻くじかれてるじゃない』
『うわ、撮影待機中の八乙女って感じ。いきなりソファーど真ん中独占してんじゃん』
『壮五……大丈夫か?まっすぐ前向いたまま入口から動かねえけど』
『逢坂さん、顔色がいつもより白いですね。胃痛を起こしていないといいんですが』
『壮五くんは俺たちのファンなんだよね?胃痛って?そんなに嫌なのかな』
『あー、逆です。十さんには分かんねえかもな、ソウ、僕みたいな若輩が、尊敬するアーティストに認知されるなんて、消えたい!ってタイプなんで』
『ヤマさん似てる。ウケる』
『こっちが騒いでる間に壮五、八乙女に腰抱かれてソファ座っちまった……がんばれ、生きて帰ってこいよ……』
「今日が楽しみで眠れなかったんだろ?」
「……は、はい」
「逢坂、俺達のファンだって聞いたぜ」
「は、はい……」
「嬉しいじゃねえか。後悔はさせない。TRIGGERに着いてこいよ」
「は、はい!」
『八乙女氏、近いです。暑苦しいです……』
『ソウ、目回してないか?』
『はいしか言っていないうちに、壮五くん、すごく汗をかいてるね……』
『甘い空気になりそうにありませんが、八乙女さん、どうするつもりなんでしょうか』
「参ったな……キスなんてねだったことねえよ。しかも可愛くだろ?こうか?」
『お、八乙女、上目遣いになった』
『あれ上目遣いか?お兄さんにはガンつけてるように見えるけど』
『でも、楽にああいう顔でお願いされたら、何でも言う事聞いちゃうなあ』
『龍はどんな顔してようと楽の言うこと聞いてるじゃない』
『天の言うことも聞きたいって思ってるよ』
「俺は可愛くねえか?」
「は、はい、かっこいいです」
「はは、サンキュ。逢坂もかっこいいぜ」
「ヒッ」
「はは、どういう反応だよ」
『そーちゃん消えんの?ちょー縦細くなってる』
『肩すくめすぎて今にも骨折しそうだよな。壮五ー、肩の力抜けよー』
「じゃあ、可愛くは、やめだ。俺は俺のやり方で行く」
『番組名全否定wこれ、特別編キスおねだり可愛いバトルなんですけど…スタッフさんが壮五応援しだしたw』
『そーちゃんマジでぶっ倒れそー。大丈夫かよ』
「つっても、やり方なんてわかんねえけどな!」
『百戦錬磨の恋愛ドラママスター八乙女、本領発揮ってか?これはいい肴になりますわ』
『いや今日は酒ねえから。八乙女どーすんだろうな』
「歌うか」
『は!?』
『ミツ声でけえって。前もこんなことあったな……いやでもなんで?』
「歌って踊れば通じ合える。俺の尊敬する奴が言ってたんだ。そうだろ?」
『楽……』
『龍が、ボクらが出会った日に言ってくれたんだ。ボクもずっと忘れてない。夏の島音楽祭でIDOLiSH7のみなさんと歌った時も、思い出していたよ』
『天……』
「くちなしの花が……香る夏の日に」
『選曲』
『三月が単語しか言わなくなっちゃった。壮五さんも固まってる……』
『そりゃ目の前で起きてる生歌が信じらんねえんだろ。ソウ、本気でTRIGGERのこと好きだもんな』
「吸い込まれるよに……あなたに恋、した」
『さすがですね。あなたに恋した、のところで逢坂さんの手を掴んだ』
『手を掴んだまま、じっと見つめているね。説得モードの楽は退かないよ』
『九条さん、八乙女さんと話す時あんなふうにされてるの?』
『七瀬さんはボクと楽の会話に興味があるの?また今度教えてあげます』
「……俺にキス、したくなんねえか?」
『さすが恋愛ドラマ主演歴任の男……壮五の手ほっぺに持ち上げて切なげに流し目!これは落ちる!』
「……逢坂?」
『あ〜っと先に壮五の意識が落ちたー!終了!救護班環、やさしく起こしてこい!』
『うす』
「なんだよ、終了か?逢坂は寝てるだけみたいだぞ」
『足組んで待ってるだけなのにやたら画になるwwそりゃ壮五も落ちるわww』
『うちの子がどうもすいません。タマが担いで帰るんで、ソファとかに倒しといてください』
「肩、ほっせーんだけど。こいつちゃんと食ってんのか?」
『お、壮五起きたか?』
「ヒッ!肩っ?!あっあの僕いまっ、手、ありますか!?」
『肩も手もちゃんとあるぞーw、それがさ、身長違うのに、オレと体重あんま変わんねーんだよ。八乙女叱ってやって』
「ちゃんと食えよ」
「は、はい……」
「そーちゃん、迎え来た。立てる?」
「大丈夫。ありがとう。僕は歩けるから、帰りに米俵を担いで帰ってくれないか。今日から僕は太るよ」
「は?」
『逢坂さん、体型に影響する食生活に切り替えるなら先に事務所に相談なさってくださいね』
『逢坂壮五はそのままのスタイルの方が映えるんじゃない?楽の言うことはあまり真に受けなくていいよ、楽もどうせ日頃蕎麦かケーキのフルーツだけしか食べてないから』
「は、はい!いえそんな、はい!」
「どっちだよ。天、うるせえな。パフェのマンゴー貰ったの根に持ってんのか?」
『壮五、立てるなら帰ってこいよー。次は陸、八乙女のキスもぎ取ってこい!』
『はーい!』