キスおねだり可愛い選手権 6【一織編】


「一織くん、お疲れさま。初めに聞かせて欲しいんだけど、一織くんは僕にすぐキスをしてくれる?」
「私がキスをねだった時、逢坂さん、焦らしたじゃないですか。ダメですよ」
「だと思ったんだ。予想が当たって嬉しいよ。じゃあ、少しだけ、僕に時間をくれるかな」
『うん?壮五の……なんだあの紙の束?』
『出た。そーちゃん、あれ得意』
『プレゼン資料のように見えます、ソウゴ、まさか……』
「こ、これは……!『一織くんが僕にキスした方がよい五つの理由と模範的パターン三類型の考察』……!?」
「制限時間もあるから手短に要点だけ伝えるね」
『なんか手元見てゴチャゴチャやってんな……カメラさん、二人の手元抜けますか?あ、厳しいですか。密着度高いですもんね……壮五も一織も夢中になるとのめり込むタイプだからな』
「わっ」
「あっ」
『あはは、一緒に顔上げて、ぶつかりそうになってる!オレも一織とよくやる!』
「すみません」
「ううん。僕こそごめんね」
「本題ですが……私も逢坂さんも完璧という共通のキーワードを持ちつつ、年齢の違い、それからクールさ、穏やかさというアプローチの差別化を図ってきました。これがどのようなキスの仕方の違いとして表出するのか、実際に演じてみせることは、ファンの方の想像力をかきたてますね」
『本題はキスの方じゃねえの?ソウももうさっき顔ぶつかりかけた時にキスさせちまえば良かったのに。なあタマ』
『ねむくなってきたー』
『ワタシもです』
『環、ナギ、集中しろよー。オレもこの時間がなんの時間か分かんなくなってきたけど』
『ソウん時とは別の意味で真面目2人が暴走してんだよな』
「ふふ。一織くんの時は直球だったね。年下の男の子らしく、教えてください、って態度で甘えてくれるのが好印象だったな」
「そうですか」
「さて、一織くん。これまでの議論を踏まえて、僕は君にどうしたらいいかな。一織くんは、どんな僕をファンの皆さんにお見せするべきだ思う?」
『なるほど、ソウ、うまいな。これでイチにイチの思う正解を言わせ、イチがソウにキスせざるを得ない流れが完成した』
『パーフェクト高校生のイオリ自身が告げた正解に、イオリがマルしないわけにはいきませんからね』
『壮五さん、すごい!』
『それ、ずるくね』
『やっぱ壮五賢いな』
「世間一般の逢坂さんのイメージは、優しく包容力がある自立した成人男性、というところでしょうが、既に逢坂さんの酒癖や音楽狂な気質などはファンの皆さんの知るところとなっています。あとは、絵心の……独創性でしょうか」
「褒められると、ちょっと気恥ずかしいけど……ありがとう」
「褒めたというか……まあいいです。そうですね、キスのねだり方ですが」
『あ!一織、いつもの生意気な顔だ!』
「あなたの、好きで好きでたまらない、って顔を、ファンの方は見たいんじゃないですか?」
「好きで……」
「逢坂さんの、恋に狂う表情には、私も少し、興味がありますよ」
「それは……」
『残り時間わずか!壮五、どう出る!?3、2……』
「少し……困る、かな……」
『終了〜〜〜!』
「負けました。一織くん、すごいですね」
『これ勝ち負けの勝負だったんだ?一織はどうだった?壮五のプレゼン資料、すっげえ厚いな』
「よくできています。現状の分析、問題点、必要な改善策、有効なおねだりの類型とその実行にあたり問題となる点や想定される失敗例、原因など……IDOLiSH7の今後の方策として参考になる点も多そうです」
『一織が参考にするの?』
「……マネージャーに、渡しておきます」
「参考になるなら嬉しいな。実は、大和さんや陸くんの攻略策を考えた時も、同じような資料を作ったんだ」
「後程そちらもいただいて構いませんか?」
「もちろん。今夜、部屋に持っていくね」
『じゃ、壮五はナギと交代な。一織、着替えてこいよ』
「ああ、例の……。本当にやるんですね……」
『オレも大和さんも壮五さんもやったんだから、一織もだよ!女装似合うように応援してる!』
「それどういう応援なんですか。似合っても嬉しくないんですけど」


「そーちゃん、キスできなかったな」
「そうだね。でも一織くんの積極的な一面を見られたのはどきどきしたな。ああいう引き出しもあるんだって、これからの期待値が高まったよ」
「ソウはどこ目指してるんだ?」
「それ突き詰めんなよ、メンバー同士でキスしてること自体訳わかんねえから。……まだ知らない視聴者の方に一応説明しておくと、男なんか口説きたくないってゴネたナギのために、オレたちはナギ以降の相手全員女装で口説かれることになってます。で、今は一織の着替えタイムで……なぜかナギも着替えに行ってます」
「壮五さんのとき、ものすごい反響があったんだよ!昔の同級生って人から事務所にお礼の電話も来て!」
「あはは、恥ずかしかったな……今でも応援してくれてるのは嬉しいよね」
「ヤマさんは、迫力?すごかった」
「あー、思い出させんな、そういうこと言うとこのへんにサムネイル出されるから」
「きっちり配信残ってるっつの。陸もかわいかったよな!」
「ありがとう、そう言われると複雑だけど……あっ、一織着替え終わったみたいだよ!」

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