キスおねだり可愛い選手権 6【一織編】
『さて!お待ちかねの女装おひろめタイムです!みなさん知っての通り、一織は男子高校生!男子高校生といえば制服!というわけでー』
『わー!一織、制服だ!』
『うちの学校のじゃん。スカートちょーなげー』
『ほほー、女子高生ね。膝下スカートにストレートの黒髪ロングで来ましたか。胸が控えめなのもいいな』
『早速そこかよ、おっさん。でも我が弟ながら完璧な美少女だわ……こんなにかわいくて大丈夫かよ?』
『こんなかわいいイチ見て、明日学校で制服姿のイチに会っちゃったら、性癖歪みそう。なあタマ』
『は?いおりんはいおりんじゃん』
『男子高校生は夢がないねえ』
『一織、ロングヘアすごく似合うよね。まつげも長いし、口も小さいから、おしとやかそうに見える!』
『一織が聞いたら怒りそうだな〜、前にネクリバの仕事でお嬢様やってた時も似合ってたよな』
『アイナナ学園の時も!一織って、ほんと顔綺麗だもんな。あっ、じゃあナギも制服になるの?』
『それで着替えに行ってんのか。アイツならやりかねないな。……っと、イチ、テーブルで新聞読み出したぞ。せっかくの美少女なのに中身イチのまんまだな』
『姿勢がいいから画になりますね。新聞が聖書かなにかに見えます』
『お、ノックの音だ。始まるみたいだぜ』
「イオリ会長。アールグレイをお持ちしました」
「会長……?お茶ですか。喉が渇いていたので、ありがたいです」
『案の定二人して制服だな。ナギも、意外と似合うもんだな。少女漫画みてえ……』
『でかいから忘れちまうけど、ナギまだ19歳だもんな』
『オレ最初ナギのこと年下だと思ってたんだよね。大人っぽいからびっくりしちゃった!』
「お礼には及びませんよ、愛らしい人。ちなみにワタシは影で学園を牛耳る副会長です」
「副会長……六弥さん、いつも悪役になりたがるのには何かわけがあるんですか?」
「何のことでしょう?ワタシは常に紳士です」
『ナギワールド全開だな……一織がとりあえず茶飲んどこうって顔してるぜ』
「そうそう、イオリの好きなお菓子は、リクとタマキが教えてくださいました」
『そー。俺が教えたー』
『オレも!』
「……そうですか」
「こちらの紅茶は、ミツキのセレクト。ティーカップは、ソウゴがイオリに似合うと言ったものです」
「兄さんたちが……」
『そういやそんなん聞かれたな』
『そうでしたね。メンバー全員分のを聞かれたので、こう来るつもりだとは分からなかったです』
『あれ、大和さんは何したんだよ?』
『あー、俺は見守ってたわ。リーダーとして』
『なんもしてねえじゃねえか』
「イオリ。アナタは、誰かを輝かせることが好きですね。その人が誰かを幸せにすることで、あなたも幸せを覚える」
「はい」
「ですが、ワタシたちもまた、イオリ自身の幸福を願っていることを、どうか、忘れないで」
『うまいな。紅茶でイチの警戒心を解いて、近くに座った』
「ワタシ、アニメ好きです。ここな、ワタシに幸せをくれます。しかしメンバーの幸福も、ワタシを幸せにします。……イオリには、幸せになって欲しいです」
『手も握って……あんなに熱心に迫られたら、僕が一織くんの立場で、本当に女の子だったら、キスしてしまいそうだな』
『うーん、でもどうかな。一織、別に面食いじゃないしな』
「それはどうも、ありがとうございます」
「イオリを幸福にするためにワタシにできること……なにがありますか?」
「真面目に仕事をしていてくだされば、それで構いませんよ」
「……ではこうしましょう。ワタシの仕事、アイドルです。アイドルとは、ファンを喜ばせるものです。ですから、イオリをファンの女性と思って、愛を囁きましょう」
「そうですか。どうぞ」
「……イオリ。あなたの笑顔で、ワタシを幸福な男にしてください」
「アニメのことでも考えては?まじかるここなのお話をされている六弥さんは、とても幸せそうですよ」
「もちろん。そして、みなさんと歌っている時も、ワタシは幸せです」
『ナギっち、俺らんこと大好きだもんな』
『嬉しいよね。僕たちもナギくんを大好きだから』
「ですが、そこには、足りないものがあります。何だか分かりますか?」
「足りないもの、ですか」
「イエス。ファンの女性に仕える騎士として、ワタシはみなさんと共に歌います。その職務への報酬が、ワタシには必要なのです」
『わっ、手の甲にキスなんて、ロマンチックだなあ』
「その報酬が足りないと」
「そうです。美しい姫君……あなたからの誉れのキスで、ワタシを満たして。イオリ」
『うわー……お兄さんナギに本気出されなくてよかったわ』
『でも一織、ナギに見つめられても平然としてるな……』
『もう残り時間少ないよ!ナギー!』
「六弥さん」
「はい」
「会長副会長設定はもういいんですか?」
『『今そこじゃねえよ!!』』
『あはは!三月と大和さんハモってる!』
『そうこう言っている間に時間です!5、4、3……』
「Oh、イオリ。ワタシと生徒会室で秘密のひとときを過ごしたいのですか?では、またアイナナ学園のようなドラマを、今度はラブロマンスで……」
「却下です」
「何故です!?きっとファンの女性たち喜びます!美しいワタシと美しいイオリの……」
『終了〜〜〜〜!!!脱線しちまったな』
「美しいワタシの顔で迫って射止められぬ者はいなかった……」
『俺もお前さんの顔面間近にあったら耐えらんねえわ……イチ強いな』
『一織、顔整ってるからな。美形に耐性あるんだよ。ナギごめんな』
「いいえ……イオリはリクやミツキのような可愛い人が好みですから。ワタシはセクシーアンドエレガント。キスできないことも考えていました」
『可愛い言うな。一織、どうだった?』
「私は何も感じるところはありませんでしたが、ファンの女性なら、姫君扱いは嬉しいでしょうね。そうしたコンセプト喫茶のような試みもコラボレーション企画として今後展開できるかもしれません」
『おもしろそう!オレたちが王子様になるの?』
「王子でも騎士でも。以前VRで恋愛シミュレーションもしましたし、同じ路線でマネージャーに提案しておきます」
『こっちも脱線してるな……そんじゃナギ、戻ってこいよ。リクは心の準備しなさい』
「ナギくん、おかえり。なにかして欲しいことはある?」
「ここなのBluRayBOX鑑賞会に付き合って欲しいです……」
「僕、もう5周してるけど……」
「晩飯ハンバーグだから機嫌直せよ。壮五も付き合わなくていいから」
「さてと。最後の最後に大本命だな。イチとリクは2人でユニット曲も歌ってるし、ドラマもやってたし、この対決は見逃せないでしょ」
「りっくん、いけそー?」
「ええっと……普段のオレは、一織のこと怒らせてばっかりだから……今回は三月みたいに、お兄ちゃんっぽく甘やかす!」
「おおー!年上の威厳見せつけてこい!」
「うん!行ってきます!」